上下顎同時印象法による総入れ歯の歴史〜木製の入れ歯〜
日本の総入れ歯の技術は実は非常に古く、1583年に作られています。当時としては長寿の74歳で往生した紀伊・和歌山の願成寺の草創者・仏姫の拓殖の木から作った木製の入れ歯です。当時は現在のように優れた材料や技術がない時代に、適合性に優れ、噛める総入れ歯を作っていました。
当時の総入れ歯の製作方法を調べてみると、非常に合理的であり、仏教芸術の伝統を受け継いでいることがうかがえます。その製作法の鍵は、蜜蠟を使って口の中の情報をコピーしていました。
これは蜜蠟を鍋で温め、それを一塊として患者さまのお口の中に入れ、噛み合わせの位置や高さを記録していました。一塊にしたものを上下に分けるため、正確な総入れ歯を作ることができたようです。
それを応用したのが、稲葉繁先生が開発した『上下顎同時印象法』です。
上下を同時に型とりを行い、唾を飲み込んでいただきます。
そうすることにより、食事をするときの口の中の情報全てをコピーすることができます。
その後、噛みあわせの機械に取り付けて、制作します。
このように、口の周りの筋肉の状態なども、明確に記録することができるため、出来上がる総入れ歯は、理にかなった形と言えます。
総入れ歯の大家、Dr.シュライヒは、「最初に総入れ歯を作ったのは、歯科医学の始祖と言われるPhilio Puffである」と伝えていました。
そこで、稲葉先生は、実は日本では400年前に木床義歯の印象に蜜蝋による印象が行われていたことを伝えたことから、彼が引退するまで大切にスライドを持っていてくださったそうです。
日本人の伝統的な技術が活かされた、木製の総入れ歯が原点となり、私たちの提供させていただいている「上下顎同時印象法によるシュトラックデンチャー」が生み出されました。
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