パーキンソン病の方の総入れ歯治療について
パーキンソン病は、脳に異常が起こり、体をスムーズに動かすドパミンが減ることによって発症する病気です。
ドパミンが減ると、体が動きにくくなったり、ふるえが起こりやすくなったりします。
症状としては、手足が震えたり、バランスを保つことができなくなり、顔の筋肉がこわばってしまうなどが挙げられます。
また、口をモグモグさせたり、口をしかめたり、舌を絶えず動かしたりするオーラルディスキネジアが起こると歯の治療が非常に難しくなります。
特に、総入れ歯においては、モグモグ運動や、舌の動きにより、入れ歯を口の中から押し出してしまい、入れ歯を使うことができなくなってしまうため、難しい症例とされています。
患者さまは、内科医からのご紹介で来院されました。
主訴:口の中が唾液でねばねばする。入れ歯が合わない。
これまでに罹った病気:パーキンソン病、不眠症、不整脈、ラクネ型脳梗塞
飲んでいるお薬:サーミオン、ロコナール、アリナミン20、ユベニコソフト、ムコスタ、バファリン、デパス、ホリゾン
とのことでした。
当院顧問の稲葉繁先生は、日本で最初に高齢者歯科講座を作り、日本歯科大学教授を勤めました。
高齢者のほとんどが、いわゆる多病でありますが、パーキンソン病やオーラルディスキネジアの患者さまの治療に携わってきたために、どのように入れ歯を作れば、患者さまが食事ができ、飲み込むことができるかを研究して参りました。
当院でご提供させていただいているシュトラックデンチャーというドイツで開発された総入れ歯は、患者さまの筋肉の動きを考え、舌で入れ歯を押し出さないように様々な工夫がされております。
日本人の死亡原因の第5位に肺炎が挙げられますが、その7割が誤嚥性肺炎です。
その他の死因のトップは窒息死で事故死よりも多いと言われています。
身体を円滑に動かすことができないパーキンソン病の方は、飲み込む機能いわゆる嚥下運動が低下します。
そのため、食べ物を飲み込むのに時間がかかったり、食べ物を誤って気道に飲み込む誤嚥を起こしたりします。
飲み込む力が低下した方でも、患者さまに合った総入れ歯が入り、噛んで飲み込む練習をすることで、徐々に筋力アップし嚥下機能が回復すると考えます。
再び口から食事ができ飲み込むことができることは生きる喜びだと思います。
パーキンソン病、オーラルディスキネジア、脳性麻痺などの付随運動により入れ歯治療を諦めてしまった方、一度ご相談をさせていただくことができればと思います。